共通テスト2022 地学基礎(本試験) 解説

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令和4年度(2022年)大学入試共通テスト 地学基礎・本試験について解説を作成しました.以前,高校地学教員として受験指導した経験をもとに説明しています.過去問を手元に準備して問題と照らし合わせながら解説を読んでもらえればと思います.大学入試で地学基礎を受験しようとする皆さんの参考になれば嬉しいです.

第1問 A 固体地球

問1【問題番号1】

断層の種類は,岩盤にはたらく力の向きと断層の動きに注目する.問題の図を見ると,以下のように,西側の地層(上盤)が東側の地層(下盤)の上にのし上がっていて,東西方向から圧縮の力が考えられるため逆断層と判定できる.

よって,正断層とある①・②,引っぱりとある①・③は誤りなので,正解は④.そもそも組み合わせが誤っている②・③は選択肢ないように!正断層についても確認しておこう.

問2【問題番号2】

地球の内部構造は,構成する物質の違いによる分類(地殻,マントル,核)という分類と,流動のしやすさ硬さによる違い(リソスフェア,アセノスフェア)の2つがあることに注意する.

aは硬さで分類したときに最も上部にあたるので硬いリソスフェア(※プレートに当たる),bは硬さで分類したときにその下にあたるのでやわらかいアセノスフェアになる.また,cは物質の違いで最上位にあたるので地殻,dは物質の違いでその下にあたるのでマントルとなる.よって正解は

プレートはリソスフェアにあたり,物質の違いでいえば,地殻とマントル最上部にあたる.地殻がプレートでないことに注意しよう.

第1問 B 地層と化石

問3【問題番号3】

地質断面図を見ながら地史を推測する問題で,地層や地質構造どうしの切った切られたの関係から前後関係を確認していくことがポイント.

① 誤:断層Dは地層Bを切っているため,地層Bが堆積した後に断層ができていることが予測できるが,断層Dは地層Cも切っているので,断層Dの活動時期は地層Cの堆積した後になるので誤っている.

② 正:地層Bに挟まっている石炭の地層が傾いているので,地層Bは水平に堆積した後で傾斜したと考えられる.一方,地層Cは水平で,その下部に不整合があることから,地層Bが堆積後に傾斜し,陸化・侵食を受けて不整合面が形成され,その後で地層が堆積したことがわかるので正しい.

③ 正:地層Bは接触変成作用を受け,花こう岩Aとの境界部がホルンフェルスになっているため,地層Bが堆積後に花こう岩となるマグマが貫入したと考えられる.また,花こう岩Aと地層Cの境界部は,不整合面になっており,花こう岩Aが陸化・侵食後に,地層Cが堆積しているので正しい.

④ 正:地層Bは堆積後に侵食作用を受けて不整合面が形成され,その後,地層Cが堆積しているので正しい.

よって正解は①

問4【問題番号4】

地層Bは,古生代後期の植物化石を含むと問題文にあるので,堆積した時期は古生代後期以降である.そのため,地層Bに含まれる化石としては,フウインボクが適当である.フウインボクは,石炭紀に繁栄したシダ植物で,ロボク,リンボクとセットで押さえておきたい.

地層Cは,新生代古第三紀の大型有孔虫であるカヘイ石(ヌンムリテス)の化石を含む礫が見つかっている.この礫は地層Cの下部つまり不整合面のすぐ上にあり,不整合面で形成された当時の礫が,地層Cに取り込まれた基底礫岩である可能性が高く,地層Cよりも古い時代のものである.そのため,地層Cは新生代以降の地層となり,地層Cに含まれる化石としては,メタセコイヤ新生代裸子植物で生きた化石として現代でも見られる)が適当である.

よって,答えは③を選べばよい.なお,クックソニアは,古生代シルル紀のシダ植物(コケなどを除く最初の陸上植物)である.

第1問 C 鉱物と岩石

問5【問題番号5】

アは,鉄(Fe)やマグネシウム(Mg)を多く含むので有色鉱物(かんらん石,輝石,角閃石,黒雲母)になる.イは,マントル上部を構成する岩石であるので「かんらん岩」であり,主にかんらん石でできているので有色鉱物が当てはまる.よって答えは①.なお,かんらん石は鉱物名,かんらん岩は岩石名なので,混同しないように注意しよう(岩石は2種類以上の鉱物の集合体).

問6【問題番号6】

花こう岩と流紋岩の共通点と相違点を問う問題で,新しい共通テストの趣旨に合った切り口の問題であるが,問われている知識は基本的な問題

まず,共通する特徴であるbは,どちらもケイ長質(酸性岩)であるため,石英を含んでいることである.また,組織を比較すると,花こう岩はゆっくり冷やされた等粒状組織であるのに対し,流紋岩は急冷された斑状組織である.よって,答えは①

第2問 A 梅雨期の天気

問1【問題番号7】

太平洋高気圧オホーツク海高気圧も,海洋上でできるので「湿った」が適切である.よって,④が正解

気圧(気団)の性質は,できる場所の特徴で決まる.温度については,北でできれば冷たく,南でできれば暖かい.また,湿度は,海洋でできれば湿潤,大陸でできれば乾燥である.例えば,シベリア高気圧(気団)は,北の大陸でできるので冷たく乾燥している.

問2【問題番号8】

高気圧で時計回りに風が吹き出し,低気圧では反時計回りに風が吹き込む(下図).天気図のA点では,東に低気圧があり反時計回りに風が吹き込むため,A点では北寄りの風が吹く.図のB点では,東に高気圧があり時計回りに風が吹き出すため,B点では南寄りの風が吹く.よって②が正解

第2問 B 津波

問3【問題番号9】

問題文が長く,グラフや図で示されている問題は,難しいように感じるが,問題文に指示通りに考えるようにしよう

まず,オは津波発生のX点からB点までの所要時間になり,図2では水深2000mで距離が100kmと図示されている.そのため,図3のグラフでは,距離が100kmのグラフに注目し,水深が2000m(親切に点線が書いてあるw)のところを読めばよいので,選択肢とも見比べて12分が適当である.

そして,カはB点からA点までの所要時間になり,図2では水深150mで距離が50kmと図示されている.そのため,図3のグラフでは,距離が50kmのグラフに注目し,水深が150m(こちらも親切に点線が書いてあるw)のところを読めばよいので,選択肢とも見比べて22分が適当である.よって,正解は③

第3問 A 太陽

問1【問題番号10】

太陽を構成している主成分は,宇宙を構成する主成分と同じく,水素とヘリウムであるため,水素を選択する.木星型惑星の大気成分も同じである.また,その水素の起源は,宇宙誕生時のビッグバンによって形成されているので,正解は②.なお,太陽などの恒星の核融合反応では,ヘリウムよりも重たい元素が生成される(発展).

問2【問題番号11】

地球の直径をRとすると,太陽の直径は,地球の約110倍とすると 110 R である(教科書としては約109倍ですが,選択肢も100倍違うので大まかにいきます).

図1より,黒点の大きさは10°毎に描かれた緯線・経線と比較して,緯度・経度で5°くらいと読み取れる.先ほど,太陽の直径を 110 R としたので,太陽の半径は2で割って 55 Rとなる.太陽の全周は 2×3.14×太陽の半径なので,太陽の半径に 55 R を代入して, 2×3.14×55 R となる.この全周が角度にして360°になるので,

 2×3.14×55 R:360°=黒点の大きさ:5° 

という関係から,黒点の大きさ = 4.7…R ≒ 5 R となるので,約5倍である(計算は最後にまとめて約分が良い).

また,図1から,6月4日から6月7日の3日間で,黒点は約40°移動しているので,

 3日:40° = X 日:360°

黒点から計算できる,地球から見た太陽の自転周期X=27日である.よって正解は④

第3問 B 太陽系

問3【問題番号12】

① 誤:金星は,地球の大気圧の約90倍になる,二酸化炭素を主とした大気を持っているので誤っている.この二酸化炭素の温室効果で,表面温度は460℃にも達する

② 正:火星と木星の軌道の間には,たくさんの小惑星が存在し,小惑星帯と呼ばれているので正しい.

③ 正:土星も天王星も木星型惑星に属し,地球型惑星である地球よりも質量は大きいので正しい.

④ 正:1992年以降,海王星の外側にも1000個を超える小天体が見つかり,エッジワース・カイパーベルト天体と呼ばれていたが,2006年に惑星の定義が変わり,惑星から外れた冥王星を含め,太陽系外縁天体と呼ばれるようになったので正しい.

よって正解は

第4問 自然環境と災害

問1【問題番号13】

① 誤:活断層は,最近数十万年間にくり返し活動している断層のことで,今後も活動する可能性が高いため誤り.

② 誤:緊急地震速報は,地震が発生後,いち早くP波を捉え,S波による主要動の大きさを予測する仕組みであるので誤り.

③ 誤:火山活動では,マグマが地層を破壊しながら上昇してくるので,火山性地震が知られており,噴火の予測の指標となるので誤り.

④ 正:マグマが火山体の内部にまで上昇してくると,山体そのものが膨らむ.この地殻変動を捉えることは噴火の予測に用いられるので正しい.

問2【問題番号14】

aの地質調査は,過去の火山噴火によって,周辺がどれくらいの影響を受けたのか知ることができるので,今後の噴火の参考となる.また,bの歴史的な資料も,これまでの火山噴火の状況や頻度から今度の予測につながるため,正解は①

問3【問題番号15】

① 誤:フロンガスはオゾン層を破壊するので,オゾンが減少するため誤り.

② 正:硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)が空気中に放出されると,雨に溶け込んで酸性雨となるので正しい.

③ 正:前線や台風の影響で,ある場所で積乱雲が発生し続けることで集中豪雨が起こり,水害や土砂災害が発生している.最近,バックビルディング現象として,土砂災害や水害の原因として注目されているので押さえておきたい.

④ 誤:には,偏西風によって,黄砂が日本列島にもたらされることがよく知られている.

全体の印象

大学入試共通テストとして2回目の実施となったが,地学基礎は,形式的な変化もなく,問題数や出題範囲も例年と変わらなかった.大学入試改革の方針通り,図や説明を伴った思考的な問題を重視する傾向はあるが,難易度は高くはなく,基本的な理解で十分な問題が多かった.対策としては,教科書の基本事項を中心に把握し,できるだけ実験や実習を伴って,手や頭を動かして理解することを意識すると良い.一部に,従来からある教科書では一般的ではないが問題文で設定されている状況に従いながら分析していく問題や探求的な設定の問題が見られるので,暗記ばかりに時間を割かず,教科書の丁寧な読解や実習に割いていくと良いだろう.その方が受験だけではなく,一般社会で必要な知識にもなっていくだろう.

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