【地学部】多摩川の化石採集~約100万年前の海に生き物たち

地学部

初めての地学同好会の活動として,多摩川に露出する約100万年前の地層を観察し,化石を採掘しました.教科書ではなく,実際に河川の様子を観察し,そして化石を掘りながら,大昔の生き物や環境に思いを馳せました.写真で紹介していきます.

【活動日:2007年6月16日】

多摩川へ出かけよう

初めてのフィールドワークということで,学校のある土曜日の午後に設定し,昼食をとってから学校を出発して多摩川に向かいました.関東地方が梅雨入りにもかかわらず,心配していた天候は雲すらほとんどない快晴でした.最寄り駅の小田急線・和泉多摩川から10分ほど歩いて,多摩川の河川敷(左岸・東京都側)につくと,下の写真にある宿川原堰がおそらく目に入ると思います.

ここで立ち止まって,堰を観察してみましょう.堰の右側の対岸には取水口があり,ここから多摩川の水が二ヶ領用水に流れていきます.こちらから対岸を見てもわかりにくいかもしれませんが,機会があれば対岸へ行ってみるのが一番です.写真には写っていませんが,手前には魚道もあります.何のためにあるのか考えさせると良いです.

ちなみに,この二ヶ領用水は,徳川家康の命で作られた,歴史的なかんがい用水路です.地学同好会ですが,野外では地学に捉われる必要はありません.野外では,みんなが気づいた「何だろう?」をあたためていくと良いです.自分が知っていれば教えましょう.誰か生徒が知っていれば教わりましょう.予習する必要もありませんし,わからなければ,疑問として後で調べてみましょう.私の一連の活動では,生徒も教員も学校と教室を忘れ,フラットでいることを心がけていました.

では,堰の観察が終わったら,そこから左側を見ましょう.上の写真では,多摩川の中央部に少し地層が顔を出しています.これが今回の目的地です.ただし,水量と川の流れ方は日々変化しますので,見えない時もあります.雨の後などで水量が多く,全く現れていなければ,化石の採集もあきらめるしかありません.また,川の流れ方によっては,中洲のようになり渡ることが難しい場合もあります.自然なので安全第一で無理はしないでください.近づくと下の写真のようになります.

この写真は,さっき堰を観察した方を撮影していて,堰後ろの鉄橋が小田急線になります.ここが目的地で,地層観察と化石採掘を始めました.

多摩川での化石採集

いよいよ化石採集を始めます.化石を崩さないように,あちこちハンマーで掘ってみましょう.やみくもに掘るのは景観としても良くありません.まずは化石の一部が出ていないか探しましょう.川が削っているところなどにも見られます.ただし,濡れていると崩れやすく,掘るのは難しいと思います.

最初は見つからないこともありますが,誰かが見つけたら集合させてみんなで観察します.何度かそういうことを繰り返すと,やがてコツがつかめてきました.大物が見つかれば,協力が始まりました.掘り出したくて,化石のギリギリをたたくと,化石もろとも壊れてしまうことが多いです.できるだけ大きめにくり抜いて,あとで要らないところを削るのが良いです.

約100万年の地層ですが,地層としては最近のもので軟らかいです.掘りやすいのですが,化石も壊しやすいということになります.

集中して2時間強くらい化石を掘り続け,たくさんの貝化石を採取することができました.立派な化石を見つけ喜ぶ生徒もいました.もちろん根気もいりますので,なかなか見つけられない生徒もいます.

大体,飽きてしまうと,川に石を投げ始めます(笑)一緒に探すなど,うまく声掛けするとよいです.でも,人がいない範囲であれば,少し投げさせるとよいかも.

最後に,地層や化石の解説をしてもらいました.是非,化石からわかる地域地質の歴史を感じてほしいと思います.教室で化石を観察して名前を覚えるのは,やっぱりつまらないと思ってしまいます.

多摩川で採集した化石

この日,採集した化石を紹介します.

こちらはわかりやすいですね.横長のマテ貝の一種かなと思います.模様もしっかり見ると良いと思います.私も化石は詳しくありませんが,そう簡単にわかるものでもありません.もし,知りたい場合は,博物館などに問い合わせるのが良いと思います.

こちらは貝化石の断面が見えています.採集は難しいですが,大きくくり抜いてクリーニングしてもよいでしょう.貝殻だけが化石になっているのがよくわかると思います.ここでは白っぽい貝化石が多いです.

こちらは貝そのものではなく,貝殻の模様が型として地層に保存されています.こういう化石は,印象化石といいます.例えば,ゾウの足跡がわかりやすいでしょうか.

こちらも印象化石です.おそらく横長のマテ貝の一種です.模様がよくわかりますね

採集した化石で良いものは,学校の実験室に持ち帰り,化石のクリーニングや分類を行い,ラベルをつけて整理しました.一度,やってみると,また行きたくなるものです.カニも出た記録があるので,そういう話をすると燃えるかもしれません.

このフィールドは,定期的に河川の増水で削られて新しい地層が出やすく,アクセスも良いため,今後の部活動でも訪れました.ただし,大きな河川でもあり水難事故に注意すること,また過剰に化石を採集したり,景観を壊したりしないように注意することが大切です.

補足メモ~飯室層

飯室層は,上総層群に分類される100万年くらい前の地層です.川底は,地層が削られやすいため,水が少なければよい露頭(土壌・植生などが少なく,地層や岩石が露出しているところ)となることがあります。以下,飯室層の参考情報です.

  • 年代: 125~143万年前(増淵他,1995)
  • 層相:青灰色・砂質シルトからなる泥岩.植物片や白色の軽石を含む.(シルトは粒の大きさが1/16mm~1/256mmで,粘土よりは大きく指で挟むとざらつく)
  • 地層の厚さ:模式地の枡形で50m.東方へ向けて薄くなり日吉付近で20m(高野,1994)
  • 模式地:川崎市多摩区枡形の稲田登戸病院東側の路頭
  • 地層群:上総層群
  • 堆積環境:外洋の影響を受けた浅海内湾

上記は,次の参考文献を参考にしています.小さい冊子ですので,科学館で購入されると良いと思います.

かわさき宙と緑の科学館 「100万年以上の時をこえて 飯室層の化石 ー地層、時代、古環境ー」, かわさき宙と緑の科学館 自然ガイドブック12

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