ヒガンバナ(彼岸花)を観察しよう~身近な自然観察

実験・観察

暑い夏が過ぎて,ようやく涼しくなる初秋を彩るヒガンバナ(彼岸花)は,私たちの身近な植物でもあります.単に,花の美しさを楽しめばよいのですが,観察するポイントが少しわかれば,ヒガンバナという植物の特徴や生態が見えてきます.近所に咲くヒガンバナの観察ポイントを易しくまとめてみましたので,参考にして,是非,観察してみてください.

ヒガンバナとは?

ヒガンバナ(彼岸花)はその名の通り,お彼岸に咲くことで知られます.その呼び名は1000種以上あると言われており,有名なところでは法華経などに出てくる「曼殊沙華(まんじゅしゃげ)」でしょうか.他にも,死人花や火事花,墓花,地獄花など,少し怖い名前が多くあります.あとでも触れますが,「葉見ず花見ず(はみずはなみず)」という別名もあります.

ヒガンバナの咲く場所

皆さんのまわりでは,ヒガンバナはどこに咲いているでしょうか.都市部ではあまり見ないかもしれませんが,少し郊外や里山に出かければ,割と簡単に見つかるのではないでしょうか.多く見られるのは田んぼの畔でしょうか.季節的にちょうど実った稲や棚田などとの景観が美しいと思います.

奈良県明日香村細川集落の棚田に咲くヒガンバナ

他には,川沿いの土手や堤防にも多いかなと思います.基本的に,人の手の入ったところに多いので,ちょっとした小道にも生えているかなと思います.

小さな河川の土手に咲くヒガンバナ
奈良県御所市・葛城古道に咲くヒガンバナ

この他にも,神社やお寺の境内,お墓の近くにも多く見られます.このことは,神聖で怖いというイメージにつながっているかもしれません.

地域によって違うとは思いますが,街でも植えられていたり,ちょっとした路地にも生えているかもしれません.自分の住んでいる地域でヒガンバナを探してみましょう.

ヒガンバナの花を観察しよう

ヒガンバナを見つけたら観察しましょう.まずは,花を見てみましょう.

近づいてよく見ると,5~8個の花が集まっているのが観察できます.花びらからは,細長いおしべとめしべが伸びていて,全体として放射状になっています.開花前のものがないか探しましょう.

左側のものは咲いていますが,右側はまだ芽が伸びているもの,つぼみが膨らんできているものがあります.長い期間,ずっと観察できなくても,いろんな段階のものを観察することで,芽が出て→つぼみが膨らみ→花が咲くという基本的な流れを観察することができます.上の写真の一番左側のものは,1つだけ花が咲いています.

こちらは7個の花がついていて,つぼみが5個,咲いている花は2個です.こういう状態だと細かな観察をしやすいですね.花びらが6枚(黄色の文字・数字),花粉の入る「やく」がついたおしべが6本 (白色の文字 ・数字 ) ,めしべが1本(白色の文字)が見られます.個体差はありますが,実際に観察して数えてみましょう.

これはつぼみですが,6個の花がついているのがわかりますね.ヒガンバナを見つけたら,近くを歩き回って探してみてください.専門的に考えていくと植物の形態はとても複雑ですが,まずは小中学校で習う程度の,花びら,めしべ,おしべ,つぼみ,芽などを中心に観察し,その数も数えてみるとよいと思います.

ヒガンバナの構造と面白い生態

花の観察ができたら,ヒガンバナ全体を眺めてみましょう.下の写真は全体を写したものです.何か違和感を感じませんか.

例えば,植物の絵を描きましょうと言われれば,どんなものを描くでしょうか.では,大ヒントです(笑)

根元の方を見てみましょう・・・あれっ,葉がありませんね!そういえば,コケ以外の植物は,根,茎,葉に分かれると習いませんでしたか.

学校で習っていても,自分で実際に観察した経験は少ないでしょう.言われないとなかなか気づかないのが普通です.私は生物も教えられる免許を持っていますが,ヒガンバナが咲いているときに葉がないことを教員を辞めてから知りました(笑)根,茎,葉に分かれるという知識は,実際にそのことを観察してみて初めて,単なる知識から理解へと少しずつ深まっていきます.こういうことは学校の普通のテストでは判別できないですね.

さて,ヒガンバナは,割と早く枯れてしまいます.サクラのように儚いものは日本人に好まれますね.なぜ葉がないのかは,こうして花が枯れてから明らかになります.花が咲いていた場所を覚えておいて,秋も深まってから来てみると,実は葉が見られます.

上の写真は,遅く咲いたヒガンバナがまだ枯れて残っていて,先に枯れてしまったヒガンバナが生えていたところから,鮮やかな濃い緑色の葉っぱが出てきていることがわかります.葉っぱだけ拡大してみると下の写真のようになります.

このように花や茎が朽ちてしまったその場所に,葉が生えてきます.皆さんも探してみてください.花も咲いていないので,ヒガンバナの葉っぱだとわかりませんね.私も知りませんでした.このようなことからヒガンバナは「葉見ず花見ず 」という名も持っているのです.ちなみに,葉の葉脈を見ると,単子葉類であるのがわかりますね.

なぜこんなことをするのでしょうか.ヒガンバナは,

  • 秋から春:葉を成長させ,光合成で栄養を蓄える
  • 夏:葉が枯れる
  • 初秋:貯めた栄養で花を咲かせる

こんな生活をしています.ヒガンバナは,多くの植物が葉を成長させて光合成をする,ライバルの多い夏を避けているのです.つまり,多くの植物が枯れる秋を狙って葉を出しています.上の写真でも,確かに周りの植物が枯れていますね.冬は,太陽の光は弱くなりますが,一方でライバルは減ります.どっちが良いかは一概には言えませんが,ヒガンバナは秋から冬に光合成をすることを選んでいるわけです.

まとめ・参考文献

ヒガンバナの観察を通して,他の植物と同じように,根・茎・葉を持ち,花びらやめしべ,おしべなどの構造を持つことがわかりました.また,ヒガンバナが「葉見ず花見ず 」であるのは,環境に適応して生き抜くための工夫であることも理解できそうです.私たちは,どうしても土の上で起こっていることばかりを見てしまいがちですが,土の中まで考えを巡らせることで,全体が見えてくるのかなと思います.

現場の教員をしていた頃は立ち止まる暇もなく,きれいな赤い花だなとしか思っていなかったヒガンバナ・・・参考文献にあげた書籍に出会ったこともきっかけになり,ヒガンバナについて少し調べ,写真を撮ったり観察したりして,この記事にまとめました.この記事を参考にしてもらい,子どもでも大人でも,多くの方が実際に身近な自然を観察するきっかけになれば嬉しく思います

参考文献:

鈴木純「そんなふうに生きていたのね まちの植物のせかい」,雷鳥社,2019.(ISBN 978-4-8441-3759-7)

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